下着の歴史

この図はツタンカーメンの王墓から出た王のフンドシを実際にどのように着用していたかを示す想像図です。現在のフンドシに近いことがわかります。明治の文明開化で一度はフンドシから猿股に代わったにもかかわらず、日本軍が着用したことで1945年の戦争終結まで、日本人の男性用下着はご承知のように下帯すなわちフンドシが主流でした。意外かもしれませんが2008年に行ったワコールの「男性の心理と下着に関する意識調査」によると、男性全体の90 %で着用経験がないものの2.3 %もの男性が愛用しています。しかも年代別では30代が最も多い数字になっており、フンドシへのこだわりが感じられます。
フンドシの長所として、外性器がたれ下がって解放感のある着心地のほか、外性器を布地でくるむために激しい運動時にも外性器を体の中央にサポートしてくれます。布地が汗を吸収して外性器の衛生を保ち、外性器と大腿部のあいだに適度なすきまが形成されて通気性があり蒸れにくいなどの点が挙げられます。短所として排尿時に手間がかかることや、履くときに都度紐で縛らなければならないこと、鼠径部や臀部が露出するため見栄えが良くないことなどがあります。
太平洋戦争後、男性のフンドシは次第にトランクスに置き換わりました。トランクスの長所として前開き口があり排尿がスムーズに行え、ゴムベルトのため着脱がスムーズであり、鼠径部や臀部を覆っているので下着姿でも見栄えが良い、などがあります。短所として外性器はフンドシと同様に垂れ下がっていますが、前述したように前方中央の股グリによって下着の右または左に偏り、外性器を左右方向から支えるものがないので左右に揺れ動きやすくなります。さらに排尿時の残尿がトランクスの裾口からズボンの内部に落下しやすかったり、裾口から外性器が露見しやすかったりする欠点があります。

なかでも比較的に湿度の低い欧米で問題にならないものの、高温多湿の夏場の日本ではトランクスの着心地ついて大きい欠点があります。弛緩した陰嚢が大腿部にねっとり密着して生じる、適切に表現する言葉が見つからない「あの不快感」の問題です。この不快感の解消のために、例え公衆の面前であっても男性の手は無意識に股間に伸びてしまい5 %の男性は1日に10回以上、ポジションを補正するという調査資料があります。湿気の多い環境や長時間座りっぱなしの仕事では蒸れによって匂いや皮膚病の原因になるなど股間の衛生面でも問題です。にもかかわらずワコールの調査によりますと、男性の4人中3人はトランクスを着用しているようです。つまり、だれもが男の宿命としてあの不快感や衛生面の問題を受け入れて我慢しているのです。
ボクサーブリーフ

こうしたなかで大腿部との密着を防ぎつつ外性器を中央にサポートすることができる新しい下着として登場したのがボクサーブリーフでした。外性器は伸縮性の生地の張力で持ち上げるようにして中央に保持されます。前記する大手アパレルメーカーの調査では20台の若者のおよそ3分の2がボクサーブリーフを着用しています。ワコールの調査では「パンツへのこだわりの強い人ほど、ボクサーブリーフタイプを好む」傾向があり、下半身がしっかり固定される「引き締め感」が好まれると評価しています。下着のタイプ別選択理由で重視されるのが、値段やデザインではなく履き心地の良さであることからも、ボクサーブリーフのように外性器と大腿部との密着を防ぐことが履き心地に直結していることが伺えます。しかしながら、若者の半数がボクサーブリーフを着用しながら、なおかつポジション補正をすると答えていることから、トランクスよりはましというレベルであり、必ずしも履き心地が充分ではないことが伺えます。これはボクサーブリーフが重力に逆らって外性器を持ち上げるため、生地の劣化とともに持ち上げる機能が低下していくことが影響しています。
タイプ別下着の着用割合から推測されることは、季節に応じてトランクスとボクサーブリーフを履き分けているということです。夏場は通気性に劣るボクサーブリーフよりもトランクスを履き、冬場は体に密着して保温性に優れてかつ、上から重ね着するタイツとの相性がよいボクサーブリーフを着用するということでしょう。
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不都合な真実

ボクサーブリーフが外性器を生地の張力で持ち上げることで、収まりが良く優れた履き心地を獲得した反面、前述したように重大な懸念が潜んでいることが近年明らかになりました。つまり陰嚢の弛緩を阻害するタイトな下着が陰嚢温度の上昇を促し、精子数の低下を招いているということです。陰嚢が体温で温められると、本来なら体温より3度以上低く保たれなければならない陰嚢の表面温度が上昇することによって、精子の生成能力にダメージを与え得ることは想像に難くないことです。はなしは逸れてしまいますが、ドイツでは使い捨てオムツが乳幼児の陰嚢温度上昇につながるとして、警鐘を鳴らしているほどです。
このことはトランクスの場合も同様で、例えば長時間同じ姿勢でデスクワークをしているときに、大腿部に陰嚢が密着していると陰嚢の表面は体温の影響を受けることになります。哺乳類のなかで人間だけが長時間着座姿勢を取り続ける動物であり、脱毛した人類だけが陰嚢が直接体温の影響を受けるようになりました。そもそも外性器と大腿部が密着するとなぜあの不快感が生じるかといえば、生理学的に好ましくない現象を感知しているからではないでしょうか。
収納比較
ここでは解説動画で「パンドシ」の詳細についてはご理解いただいているという前提で、「パンドシ」と他の男性用下着とで外性器の収納状態がどのように異なるのか比較します。

図は下着を着用する人体の断面を表し、赤い線は下着のウエストの前から後を最短距離で結ぶ線を表しています。例えばフンドシでは帯の両側部が引っ張られて最も短くなり、両側部に挟まれる部分を膨らませて外性器をくるむので一番右側の図のような線になります。人体の前ウエストから後ウエストを最短距離で結ぶ線分の長さを股上前後長と呼びますが、トランクスの場合赤い線は股グリの稜線上を結ぶ線となり、その線の長さは股上前後長よりもおよそ10㎝ほど長く作られています。従って図のように股上表面と赤い線との間には大きい隙間ができており、外性器を拘束していません。一方ほかの下着の場合、赤い線は外性器の周囲で左右にわかれて股上前後長に近い長さになります。このため赤い線を形成する生地によって外性器を両側からサポートする機能がうまれます。なかでも生地の張力の大きいストレッチ素材のボクサーブリーフの場合、図のように外性器全体を下腹部に押し付けて上向きにサポートします。
図からフンドシと「パンドシ」だけが、外性器を中央にサポートしつつ、外性器が垂れ下がり、陰嚢が弛緩して精子の生成に好ましい下着であることがわかります。フンドシの場合、履き上げ直後は外性器はやや前方から圧迫される感触がありますが、「パンドシ」の収納部は立体縫製によって前方に十分な空間が確保されるため、まるで下着を履いていないかのような圧倒的な解放感の履き心地を提供しています。
